top of page
Search
  • Taka Muraji 村治孝浩

日系企業・人財管理の「危ない」理由(1) 日系企業で働くアメリカ人の本音~日本の会社は本当に働きやすいのだろうか?

アメリカ人にとって、いまだに、日本企業は決して働きやすい環境ではありません。それは、多くの場合、異文化の壁であり、その異文化が生み出す組織的な構造の違い、そしてマネジメントの形態への違いの違和感でだったりします。ところが、ある調査を目にして、この構図は外国だけではなく、日本国内でも同じなのだと見識を新たにする、興味深い調査が発表されています。


昨年12月に労働政策研究・研修機構が行った「日本企業における留学生の就労に関する調査」(留学生調査・企業調査)によると、留学生の83.5%が「日本企業への就職を母国の留学生に勧めたい」としている一方、その64.9%が「日本人社員の異文化への理解度を高める」施策を希望しており、また59.6%が「外国人の特性や語学力を活かした配置、育成を行う」、さらに40.5%が「外国人向けの研修を実施する」ことを希望している、という調査結果が出ています。


一方で、母国の留学生に日本企業を薦めたくない理由としては、73.1%が「外国人が出世するのに限界があるように見えるから」、61.9%が「日本企業は外国人の異文化を受け入れない場合が多い」と回答しています。


この調査は日本国内の外国人を雇用する企業を対象に行われた調査ですが、結果を読んで在米日系企業で働くアメリカ人社員を対象に同様の調査を行った場合、似たような結果が出るだろう、というのが正直な感想でした。


私はクライアントにコンサルテーションやコーチングを行う場合、まず日本人駐在員にアセスメントを行い、さらにアメリカ人社員に対しても職場環境に対するアセスメントを行います。その際に、日本人からはアメリカ人社員に対して様々な不満が出てくるのですが、往々にして「外国人の異文化を受け入れられない」ことからくる不満、または、根底に異文化への無理解があるにもかかわらず、それに対する認識が薄く、結果的にアメリカ人社員の非難へと走るという傾向が高いように見受けられます。


一方のアメリカ人社員からの不満に対しては、アメリカの文化を理解せずに日本流を押し付けようとすること、そして意思疎通に対する不十分な態度などが、多く見られます。今日は、今まで行ったアセスメントの中から、非常に初歩的な不満として普遍的に見られるアメリカ人社員の日本企業で働くことへの不満をご紹介してみましょう。


【日本企業へのなぜ?1】 日本の社長はどうしてあんなに偉そうなの?

ある日本のメーカー系企業で働いています。私たちの会社では、日本から新しい社長がほぼ3年周期で訪れては、帰って行きます。でも、なぜかみんな会社ではとても不機嫌そう・・・というか不愉快そうです。私たち社員には挨拶もありませんし、逆に私たちが「Hello!」「Hi!」と声を掛けても、顔を背けて、気まずそうにそそくさと立ち去ってしまいます。エレベーターで一緒になってしまった時などは、気まずさのあまり、めまいさえ・・・。上に立つ人間はもっとフレンドリーに社員に接してほしいし、せめて朝の挨拶程度はするべきです。私たちアメリカ人社員は、本当に嫌われているのだと、悲しくなってしまいます。


【日本企業へのなぜ?2】 派遣の前にもう少し英語を勉強してください!

日本語が英語とまったく違う言語で、習得するのが困難だということはわかります。でも、せめてアメリカに来る前にもう少しトレーニングしてきてほしいと思うし、会社は研修の面倒をしっかり見るべきです。彼らの片言の英語を理解するの、ものすごく神経を使うのです。しかも、2年周期で新しい人と入れ替わるので、慣れる時間もなくお互いに大変です。先日も、上司からある仕事の件で「君は、こんなことをして『ご先祖』に恥ずかしくないのか?」と怒鳴られて困惑しました。わたしの先祖・・・ハンガリーから100年前に来た祖父母に、なぜ、恥ずかしく思うのだろう?必死になって考えたのですが、わかりません。結局彼が言いたかったのは、「ご先祖様」ではなくて「前任者」のことだとわかったのは、その数日後のこと。今では笑い話ですが、このような誤解は日常茶飯事で、本当のところ大きなコミュニケーションの障害になっています。


【日本企業へのなぜ?3】 女性の立場は一体どうなっているの?

日本から毎年たくさんの駐在員が来るのですが、なぜか、男性ばかり。女性が駐在員として派遣されたことは一度もありません。つまり、これは女性が管理職には登用されない、ということを意味していると考えて差し支えないと思うのですが・・・そういえば、アメリカオフィスでも上位管理職は全員男性ばかりで、マネージャー研修の機会を与えられるのも男性オンリーです。女性社員の私としては、この会社に働いていも未来は無い、ということを暗に示されているようで、意欲が失せてしまいます。今は、このご時勢ですが新しい転職先を考えている一方、女性差別で集団訴訟に持ち込んでもいいんじゃないかと同僚と話し合っています。


【日本企業へのなぜ?4】 日本人だけ・・・というのが多すぎます

うちの会社では、日本人社員はいつも日本人同士で固まって行動しています。昼食も一緒、週末は週末でいつも一緒にゴルフに出かけてるみたいだし。でも、僕たちアメリカ人が仲間に入れてもらえることはほとんどないんですよ。問題は、ここでビジネスの重要な話が往々に交わされていることなんです。雑談の輪に入れないアメリカ人は当然、蚊帳の外。さらに、ミーティングも日本人だけで行われるものも頻繁にあり、結果すら知らされないことも往々です。アメリカ人社員の役職などは名ばかりで、もう、本当に何の力もないのが実情です。


【日本企業へのなぜ?5】 不必要な書類が多すぎます!

わが社では、もう、ちょっとしたことも全部書類、書類、書類。出張のレポートから、小さな意思決定、ボールペン1本買うのも書類!もう、デスク中、あっちこっち書類の山です。でも、もっと不思議なことは、こんな山のような書類の嵐を、ファイルはしても誰も確認しているのを見たことなどありません。おかげで、うちのオフィスは書類の箱が山積みになって大変です。必要な書類は文書に残しておくのは理解できるのですが、何で、こんなに不必要なことにまで書類を求めるのでしょうか?その記入するのに時間と手間がかかるし、紙も無駄!毎日書類記入だけでいたずらに時間が消費されて、本当に効率が悪くやってられません。


【日本企業へのなぜ?6】 表作成フェチの上司・・・一体何してるの?

うちの日本人上司は、いつもPCのエクセルとにらめっこをしています。何をしているかというと、ものすごく緻密なスケジュール管理表を作っているのです。1日の大半を、そういうありとあらゆる表作成に時間を費やしています。で、うれしそうにプリントアウトして、壁に貼っては大声で「守れ、守れ!」と言います・・・でも、それがあまりにも非現実的なので、誰も聞いていません。日本人って、本当に表やチャートが好きですね。でも、実際にそれを実行するために行動するほうが、もっと大切だと思うんですけど。


【日本企業へのなぜ?7】 ハラスメントが公然と許される会社です

うちの会社では、ありとあらゆるタイプのハラスメントが横行しています。たとえば、上司が部下を人前でひどい言葉で罵倒したり、怒鳴りつけたり・・・。それから、女性だから、という理由で考えなれないことを言われたりもします。この間も、「君は独身で、子供もいないから、この出張は大丈夫だろう?」と上司に言われてドン引きしました。独身で、子供がいない、ということがどういう理由で出張と結びつくのか、理解できません。上司はまだ30台前半の若い日本人男性ですが、若い世代でも、日本人の男性はこんなことを平気で言うんですか?


さて、上記はほんの一例。中には、文化の違いで「?」と感じられるものもあるかもしれません。また、「ああ、よくある!」とうなづけるケースもあるでしょう。しかし、一方で、この中のいくつかは、会社を非常に危険な状況へ導く可能性をもつケースとして見過ごせないものでもあるのです。セクハラ・パワハラはそのわかりやすい例ですが、それ以外にも、訴訟の対象になりえるものがあるのです・・・。


さて、皆さんには、それがお分かりでしょうか?

次回は、これらのケースから、危ない日本の企業の習慣を少し見て行くことにしましょう。

6 views0 comments

Recent Posts

See All

日系企業・人財管理の「危ない」理由 (2) 管理職がむっつりしていると会社が損をする~笑わない日本人管理職の功罪

日本人の管理職は、笑わない・・・というイメージが、日系企業で働くアメリカ人の間ではごく一般的です。日本では仕事はまじめに取り組むもの、仕事中は「ちゃらちゃらしない」というのは、道徳的にごく当たり前のことといえるでしょう。さらに、ポジションが上がるにつれて、むやみやたらと相好を崩すと、威厳に関わる、という意識もある上、見知らぬ人間に微笑みかける文化がない日本人は人前で笑みを漏らすことは滅多にありませ

歴史が作ったアメリカのビジネス観(2) アメリカ人の働く価値観~なぜアメリカ人は短期指向で考えるのだろう?

さて、前回はアメリカの建国の歴史が意外なところでアメリカ人の ビジネスの価値観を形作っていた・・・と言う話題でした。 今回は、アメリカ人がどうしてこれほどまでに短期指向で物事を見つめるのか と言うことについて考えてみましょう。 アメリカではビジネスもゴール設定は非常に短期です。 企業ではクォーターと呼ばれる四半期ごとに目標設定を行い それに従って企業の業績観測も行われますが、 実はこの歴史的背景が

bottom of page